どんなに心を打たれたとしても、
スタンディングオベーションはちょっと気恥ずかしい。
お芝居とか演奏会などに行って、心の底から
舞台上の人々にエールを送りたいと思っていても、
私は席に座ったまま、盛大に、精一杯、拍手をするのみだ。
日本人のメンタリティって、そういうものだと思っていた。
ところが昨日、衆議院本会議での安倍首相の所信表明演説で
自民党議員によるスタンディングオベーションがあった。
今まで演説終了後などにはあったようですが、
演説の最中でのそれは異例のことだという。
映像を見て、思わずツッコミを入れてしまった。
「欧米かッ」
日本はアメリカの言いなりなんだなあと常々感じていましたが、
所信表明演説まで、アメリカの真似をしはじめたようです。
スタンディングオベーションがあったのは、
日々緊張感を強いられている海保や警察、自衛隊に対して
「心からの敬意を表そうではありませんか」と述べたシーン。
首相自らも拍手をしていました。
・・・なんだかなあ。
そりゃ、数十年前の自衛隊の立場を思えば、
国会議員がスタンディングオベーションをするなんて
隔世の感がある。でもそこで感動している場合じゃないだろ、
と思うもう一人の自分がいるのも事実。
・・・だったら、ほとんど丸裸のまま海外派遣に行かせるような
法案を通すんじゃないよ。
装備体系も予算も、訓練さえも十分でない中、
「緊張を強いている」のは、どこの誰なの?
個々人の強靭な意思と勇気に頼るしかない現状を思えば、
国会の場でスタンディングオベーションなんて
たちの悪い空疎な芝居を見ているような気持ちになってしまう。
欧米のそれは儀礼的なケースがほとんどだという。
日本の場合、スタンディングオベーションの慣習がないんだから
儀礼にもならない。じゃあ何?
本当に心酔しちゃってるの?
それともただの一致団結の「ノリ」?
あるいは首相の力の誇示?
いずれにせよ、この小芝居は胡散臭い。
しかもその直後、場内でヤジが飛んでいる中、
天皇陛下のお気持ちの表明について言及し、
「有識者会議の場において国民的理解のもとに議論をしていく」だって。
さらっと10秒くらいで流していた。
多分、国会議員は誰も聞いていない。