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笹幸恵
2016.9.27 02:11

欧米か?

どんなに心を打たれたとしても、

スタンディングオベーションはちょっと気恥ずかしい。

お芝居とか演奏会などに行って、心の底から

舞台上の人々にエールを送りたいと思っていても、

私は席に座ったまま、盛大に、精一杯、拍手をするのみだ。

日本人のメンタリティって、そういうものだと思っていた。

 

ところが昨日、衆議院本会議での安倍首相の所信表明演説で

自民党議員によるスタンディングオベーションがあった。

今まで演説終了後などにはあったようですが、

演説の最中でのそれは異例のことだという。

映像を見て、思わずツッコミを入れてしまった。

「欧米かッ」絵文字:急ぎ

日本はアメリカの言いなりなんだなあと常々感じていましたが、

所信表明演説まで、アメリカの真似をしはじめたようです。

 

スタンディングオベーションがあったのは、

日々緊張感を強いられている海保や警察、自衛隊に対して

「心からの敬意を表そうではありませんか」と述べたシーン。

首相自らも拍手をしていました。

 

・・・なんだかなあ。

 

そりゃ、数十年前の自衛隊の立場を思えば、

国会議員がスタンディングオベーションをするなんて

隔世の感がある。でもそこで感動している場合じゃないだろ、

と思うもう一人の自分がいるのも事実。

 

・・・だったら、ほとんど丸裸のまま海外派遣に行かせるような

法案を通すんじゃないよ。

装備体系も予算も、訓練さえも十分でない中、

「緊張を強いている」のは、どこの誰なの?

個々人の強靭な意思と勇気に頼るしかない現状を思えば、

国会の場でスタンディングオベーションなんて

たちの悪い空疎な芝居を見ているような気持ちになってしまう。

 

欧米のそれは儀礼的なケースがほとんどだという。

日本の場合、スタンディングオベーションの慣習がないんだから

儀礼にもならない。じゃあ何?

本当に心酔しちゃってるの?

それともただの一致団結の「ノリ」?

あるいは首相の力の誇示?

いずれにせよ、この小芝居は胡散臭い。

 

しかもその直後、場内でヤジが飛んでいる中、

天皇陛下のお気持ちの表明について言及し、

「有識者会議の場において国民的理解のもとに議論をしていく」だって。

さらっと10秒くらいで流していた。

多分、国会議員は誰も聞いていない。
 

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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